ブランドの強さは「記号」と「意味」をリンクさせること
マーケッターとして仕事をしていると、「この商品のブランドを強くしたい」みたいな話をよく相談されます。
ブランドが強ければ=商品が売れる!ではどうすれば、ブランドが強くなるのか?
ブランドの強さは「記号」と「意味」をリンクさせること
その前に、そもそも何故、ブランドが出来たのでしょうか?
時間の短縮とコスト削減がブランドのメリット
「アメリカ」でブランドができた理由
ブランドができた理由は、ヨーロッパとアメリカでは若干異なるといわれています。
19世紀初頭、開拓時代のアメリカでは、モノの供給のシステムが不安定でした。まず、値段が一定ではなかったです。正価の値段はあったらしいですが、店は客によって値段を変えていました。
さらに供給が不安定でした。大量生産や生産管理という考え方がなかったために、工場によって生産量が異なっていました。
また店の仕入れもその場まかせでした。例えば売上が変わらないのに、1月は4工場からキャンディを4箱仕入れ、2月はB工場から1箱仕入れるといったこともよくありました。
時期によって、同じメーカーでも品質が異なり、仕入れ先も変わることが多かったのです。
やがて開拓時代の粗雑なやり方は衰退していき、何を買っても価格は10セントという 「10セントストア」が台頭しました。
ところが価格を10セントに統一するためには、飴にしても砂糖にしても、あらかじめ袋に入れて、量を一定にしなければなりません。
そこでパッケージができ、こうして店は「量り売り」の時代から脱却したのです。
「誰が買っても同じ値で購入できる10セントストアは、たちまち大流行となりました。そのため店が乱立し、競争が始まっていきました。
各店は、他の10セントストアとの差別化をはかり、固定客をつくろうと躍起になりました。
では、具体的には何をしたのか?
まずは自分の店の商品は品質がいいと訴求しようと考え、パッケージに店の名前を入れることを思いついたのです。
商品の品質を保つためには、仕入れ先も絞らねばならない。生産技術が著しく異なる複数の工場から商品を仕入れると、商品のクオリティを保つことができません。そこで工場も1本に絞り始めました。
こうしてパッケージにストアネームが表示され、ストアブランドができました。
これがブランドの始まりです。
アメリカのブランドは「誰が買っても一定の品質が得られる」ことから始まったのです。
ブランドは、いわば「保証」です。そのブランドのついたチョコーレートを買えば、それ以上おいしい品物が手に入ることはありませんが、それ以上まずい品物を買う恐れもない。
アメリカのブランドは、失敗したくないというリスクヘッジを考え、マイナスの発想から始まったのです。
「ヨーロッパ」でブランドができた理由
一方、ヨーロッパのブランドの歴史は、ルネッサンス時代になります。
当時のヨーロッパ貴族の重大な関心事の一つはファッションでした。当時の貴族はデザイナーを抱えて服をつくっていました。
ところが気に入った服を再度注文したくても、デザイナーが多すぎるので、誰につくってもらったらいいか、なかなかわからない。
そこでデザイナーは服の襟に名前をつけて、貴族が再注文しやすいようにしました。
これがヨーロッパのブランドの始まりです。
ヨーロッパのブランドは「気に入ったモノの品質と同等のモノをリピートするための手がかり」として発達したのです。
現代のブランドには、どんなメリットがあるか?
第一に、企業側にとっては、リピートの手がかりを提供することによって、コストを削減できます。
小売店で取り扱ってもらうためには、知名度のない商品よりも知名度のある商品のほうが有利です。
生活者は、商品が棚に置かれている場合、知らない商品よりも知っている商品に手を伸ばしやすいです。その為、知名度のある商品は、販促費やPOPなどの店頭広告コストが少なくてすみます。
つまり、ブランドをつくるまでには巨額の販促費が必要ですが、その知名度が確立されれば、それを上回る利益を生み、コストが削減できるのです。
第二に、生活者にとっては、一定の質(満足)を努力せずに得る手がかりとなります。
こうした手がかりがなければどうなるか? 品質を見分けるために学ぶお金や、モノを探す時間(コスト)が必要になります。
例えば、個人商店でノーブランドの野菜や肉を買うためには、主婦としてのキャリアが必要でした。長年の経験がなければいいモノが選べないからです。
これに対して現代の主婦は「いいものが多い店」で買い物をすることにより、時間の短縮となります。「いいものが多い店」は、ブランドの役割を果たしているのです。
ブランドは、企業側にとっては「コストの削減」、生活者側にとっては「時間短縮」のための道具なのです。
強いブランドを作る2つの要素
①知名度を上げる。
最初にやるべきことは知名度を上げることです。誰も知らない商品は、存在しない事と同じです。
目標とする知名度は60%。予選通過で40%です。
知名度につきましては、以前の記事で詳細を書いていますので、こちらを読んでください。
②商品の「記号」と「意味」をリンクさせなくてはならない
ブランド力の強弱は「ブランド名とそのブランドから連想される定義がどれだけリンクしているか」です。
例えば、このマークをみたら何をリンクしますか?
「宅急便」ですよね。クロネコヤマトのマークをみただけで、すぐに「宅急便」とリンクします。これこそが強いブランドの定義です。
これもすぐ連想しますね。交通マークの標識「一時停止」。これも強いです。
じゃ、逆にこれはどうですか?
これは交通マークの標識「安全地帯」です。
路面電車に乗り降りする乗客や、道路を横断する歩行者の安全確保のために道路上の交通を規制している場所らしいですが、正直、このマークをみて「安全地帯」がリンクされる方は少ないと思います。
これがブランドの強さでいえば、まだまだ弱いという事なります。
ブランドの強さは「記号」と「意味」の双方向一致
ブランドを強くするためにまずは「知名度」を上げること。
そして次に商品の「記号」と「意味」をリンクさせなくてはなりません。
上記2つが揃って、はじめて「強いブランド」といえるのです。